ロードバイクにおけるヒルクライムの「危険」について、すきっぷ流に考えたいと思います。基本的に舗装路になりますが、人間の住む世界から離れた山中になりますので、あらゆる危険性を伴います。ダウンヒルで飛ばし過ぎて崖からダイブとかではなくて、バイクコントロールでどうこう出来る問題じゃない部分を考えてみたいと思います。
山には節足動物から哺乳類まで、様々な生き物が生息しています。私は生物の話しが得意ですので、ここから考えて行きたいと思います。
その1 「熊」
山といえば「熊」を思い浮かべる方は多いと思います。本州には「ツキノワグマ」、北海道には「ヒグマ」が生息しております。本州でも伊豆半島には生息していないようです。また、九州では絶滅したと考えられております。
東京都でも奥多摩に生息しており、最近では飯能、ときがわ町でも目撃情報があります。
基本的に熊は人間を恐れます。ヒグマの場合も同じです。攻撃される時は3パターンあるのではないかと考えています。
1つめは「鉢合わせ」です。熊と人間がお互いに気付かないまま、熊が「やらなきゃやられる」と思う距離に入ってしまった場合に襲われる事があるようです。この危険距離は熊(個体)しだいで、至近距離で遭遇しても逃げ出す熊もいるでしょうし、かなり離れていても襲ってくる熊もいると思います。また、向かって来て5m位手前で急停止して地面を両手で叩いて「近付くな!」と威嚇をしてくる熊もいるそうです。この場合は熊に背を向けず、声をあげたりして熊を驚かさないように注意をしながら、ゆっくりと下がって距離を取って下さい。
2つめは「小熊を守るため」です。これは噂されていますが、本当かどうかすきっぷには分かりません。裏磐梯で小熊が道路を横断しているのを車中から見かけた事がありますが、近くに母親がいるかも知れないので降りて追いかけたりしませんでした。せっかく試すチャンスがあったけど、私も死にたくないのでお許しください。
3つめは「食べるため」です。めったには無い事ですが、これも熊(個体)次第です。最初から人間を「獲物」と認識している場合は喰われます。熊は犬と同じ「食肉目」なのですが、雑食性で季節によって様々な食物を食べています。山菜だったり、昆虫だったり、木の実だったり。ヒグマが川を遡上するサケを捕まえるのも季節による食物のひとつですね。熊はチャンスがあれば鹿などの大型動物も襲います。昔はよく熊に出会ってしまったら「死んだふりをしろ」と言われておりましたが、無抵抗をアピールして熊に立ち去ってもらうには効果がありますが、人間を「獲物」と認識している熊には「さあ、私を喰ってくれ!」とアピールする事になります。ツキノワグマでは事例が少ないですが「秋田の人食い熊」は記憶に新しい所ですね。この場合は必死に反撃して下さい。鷹村守ばりのストレートを鼻っ面にでも打ち込んで下さい。だまっていると喰われます。
熊に襲われてしまった場合、このように防御しましょう。マッケレル君久し振りの出番です。
首筋をガードしてこのような体勢を取り、急所の集中する体の内側を守って下さい。大量出血を起こす可能性がある動脈もこれでほぼ守ることが出来ると思います(脇もしめましょう)。ていうかこれしかないです。背中にリュックを背負っていたら亀の甲羅の役割を果たすのでベターです。これで出来るだけ耐えましょう。こちらが攻撃する意思を見せなければ早めに収まるはずです。あまりにもしつこかったり「このままでは殺される」もしくは「喰われる」と思ったら自己責任で反撃してください。
私は山歩きをしていたので、熊の事も勉強をしました。
私は上記の本を持っていますが、熊に会いたければ上の本の通りに、会いたくなければ逆の事をすると良いらしいです。絶対に会いたくない方は、熊が居る所に行かない事です。
その2 「イノシシ」
「猪突猛進」なんて言葉がありますが、怒ると手が付けられない印象です。でも、やっぱり基本的には逃げて行くでしょう。私も小さいイノシシなら伊豆で夜中に見かけた事があります。イノシシの厄介なのが、上下の顎にあるキバです。頭を振り上げて攻撃してくるので、人間の太ももの内側の動脈を切ってしまう可能性があります。イノシシに殺される人は、大体が出血多量です。あと滅茶苦茶咬まれるようなので、熊の時の防御が役に立つかもしれませんが、脇腹が怖いなあ。襲われたら報告します。
その3 「鹿」
鹿は逃げます。逃げまくります。白いお尻だけ目立つので、尻がぴょんぴょん逃げているように見えます。南アルプスの鳳凰三山に登った時に、カモシカに3m位まで近付く事が出来ましたが、高校生の時から「練馬のムツゴロウ」と呼ばれていた私の特殊能力のせいだと思います。危険じゃないけど怖い方も居るかも知れないので記載しておきます。
その4 「猿」
飯能の伊豆が岳の隣の武川岳で、霧の中20頭位の猿の群れに威嚇された事があります。はっきり言って怖かったです。ダッシュで向かって来て通り過ぎて行く事を繰り返されましたが、飛び掛っては来ませんでした。高校生の時から「練馬のムツゴロウ」と呼ばれていた私の特殊能力のせいだと思います。猿の怖い所は「牙」ですね。犬並みの牙を持っていますので咬まれないようにしたいです。Bウイルスを持っている可能性がありますので、咬まれたらお医者さんに診てもらうのが良いと思います。Bウイルスはニホンザルなどのマカク属サルを自然宿主としていて、ヒトおよび新世界ザルが感染すると致死的症状を呈することで問題とされております。Bウイルスに感染すると急性進行性髄膜脳炎で死亡する可能性があります。
その5 「蛇」
本州ではマムシ、ヤマカガシ、北海道ではマムシ。沖縄ではハブ類、ウミヘビを含むコブラ科の毒蛇が生息しています。マムシは体が比較的小さいので毒の量は少ないのですが、ハブよりも毒性は強いと言われています。毒蛇の面白い所はニシキヘビのように巻きついて絞め殺したりしません。咬んで放置して、獲物が息絶えるのを待ちます。マムシの血清を常備している病院はあまりないと思われます(血清は生ものです)。咬まれてしまったら群馬県の「ジャパンスネークセンター(へび研)」さんのお世話になりそうです。マムシに咬まれて毒が入った場合、金槌で打たれたような激しい痛みがあると聞いております。私は爪を咬まれた事がありますが、爪のお陰で毒が入りませんでした。私の自由研究によると、マムシの毒は2週間で満タンになります。餌を捕るために毒を使った直後なら、あまり毒が入らない事もあるかと思います。金槌で打たれたような激しい痛みがあった場合は出来るだけ心拍数を上げないようにして医療機関を訪れてください。
ヤマカガシは私が子供の頃には無毒と思われていました。毒蛇と分かったのは比較的最近の事です。こちらは後牙類と言って、奥歯に沿う形で毒が流れる仕組みになっています。また、首筋の毒腺を強くつかんで破ってしまうと毒が飛び散る事もあるようです。ハブやマムシ、コブラのように体内に注入できる毒蛇と違って原始的な構造の毒蛇になります。私も子供の時から何回も咬まれていますが、毒を食らった事はありませんので過度の心配は不要です。しかし、長い時間咬まれ続けたりすると毒が体内に入ってしまうかもしれないので注意が必要です。毒性は強いです。
奄美、沖縄地方の毒蛇については割愛させて頂きます。
その6 「蜂」
ああ、私はどれだけ生物に関っているのでしょう?オオスズメバチにも刺された経験があったりします。修学旅行生とかが襲われるのはほとんどが軒下などに巣を作る「キイロスズメバチ」、「コガタスズメバチ」だと思われます。「オオスズメバチ」は地中に巣を作ります。危険性に関してはどれでも同じで、アナフィラキシーショックを起こすかどうかが鍵です。刺されると滅茶苦茶腫れてしまいますが、1匹、2匹に刺されて死ぬことは無いです。痛みもインフルエンザの予防注射と大して変わりません。ただし、体質(免疫とアレルギー)によっては、4年以内に2回目を刺されてしまうとアナフィラキシーショックを起こしてしまい、呼吸困難など命に関る重大な症状を引き起こしてしまう可能性があります。アナフィラキシーショックを起こすかどうかの検査はパッチテストで行なう事が出来るのですが、病院は基本的にビビッてやってくれません。なぜならテストに使用する量には関係なく、テストでもしもアナフィラキシーショックが起きてしまったら重篤な状況に陥ってしまう可能性があるからです。私もアレルギー科でテストをお願いしたら断わられました。上記の理由であまり刺されないほうが賢明です。蕎麦やハムスターで亡くなってしまう方もいるので気をつけましょう。大丈夫な人は大丈夫です。何回刺されても。
あと、蜂を怒らせてしまったら、ダッシュで逃げてください。人間より遅いです。目も悪いし。50mもダッシュで逃げれば追いかけて来れません。死んだ振りじゃないけどじっとしていても刺されます(←刺された後に逃げ切った私が進言します)。黒い服装は特に刺されるようなので、注意をして下さい。
毒蛇、蜂には上記のポイズンリムーバーが有効です(アナフィラキシーショックを除く)。
その7 「ダニ」
近年野外でマダニに咬まれる事により、感染症を引き起こす事例が報告されています。日本には、命名されているものだけで47種のマダニが生息するとされています。マダニは動物の体表に口器を刺し込んで血液を吸います。仕組みは理解していないのですが、けっこうしっかりと刺さり、簡単には抜けません。海外から輸入される蛇やトカゲ、リクガメなどに寄生している事も多く、私もいつの間にか頭に取り付かれて刺された事があります。山で草むらに入ったりする時は注意が必要ですね。調べてみると思ったより多くの感染症の媒介になっているので驚きました。
主なダニ媒介感染症
この感染症は主に中央アジアや中東など、海外で起きる感染症のようです。確立された治療法は無く、致死率が高い危険な感染症です。これらの地域行かれる場合は注意が必要です。
この感染症は国内でも発症例があります。ボレリア・ミヤモトイという1995年に北海道で発見された新種のボレリア菌が原因で引き起こされ、主にシュルツェマダニ(Ixodes persulcatus)から感染します。感染すると、主に、発熱や頭痛、筋肉痛など風邪のような症状が出ます。治療法はテトラサイクリン系の抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)の投与が有効で、これまでにボレリア・ミヤモトイに感染したことによる回帰熱患者での死亡例は報告されていません。
まだ歴史が浅いので注意が必要ですね。ちなみにボレリア・ミヤモトイですが、みやもとさんが発見者ですね。生物の学名には、発見者の名前の一部が使用される事が多いです。
2011年に中国において新しい感染症として報告された病気です。日本、中国、韓国での患者発生が確認されています。病原体はSFTSウイルスで、主な初期症状は発熱、全身倦怠感、消化器症状で、重症化して死亡することもあります。日本でのSFTSの致死率は約20%です。日本ではフタトゲチマダニとタカサゴキララマダニがヒトへの感染に関与していますが、ウイルス保有率は0~数%とそれほど多くはありません。また、SFTSに感染している犬や猫、野生動物に咬まれるなどして人間に感染する可能性が疑われています。発症した場合の有効な治療薬は見つかっておらず、対症療法になります。
ウイルス保有率が低いのでそれほど神経質にならなくても良いのかも知れませんが、ダニに咬まれて潜伏期間の6~14日後に、上記のような体調の異変が起きた場合は、早めに医療機関の受診を行なってください。
この感染症は国内では1995年以降、過去に北海道で4例あるのみです。日本脳炎と同じ分類(属)のフラビウイルスが原因で引き起こされます。潜伏期間は、通常7~14日です。中央ヨーロッパ型脳炎では、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状が出現し、2~4日間続きます。そのうちの約3分の1は、髄膜脳炎に進展し、痙攣(けいれん)、眩暈(めまい)、知覚異常などがみられます。ロシア春夏脳炎では、高度の頭痛、発熱、悪心などの後、髄膜脳炎に進展します。発症した場合の致死率は、中央ヨーロッパ型脳炎では1~2%、ロシア春夏脳炎は20%といわれており、回復しても数割の方で神経学的後遺症がみられます。 なお、特異的な治療法は見つかっていないようです。
致死率もさることながら、後遺症も怖いですね。
古来から人間を死に至らしめる妖怪として恐れられていたツツガムシ。その姿はダニそのものです。日本には120種類のツツガムシが生息しておりますが、そのうちの3種類が媒介になるようです。ツツガムシは卵から孵った幼虫期に、一生に一度だけ哺乳類を吸血し、その後は土の中で昆虫の卵を食べて生活します。保菌のパーセンテージはわかりませんが、つつが虫病リケッチア(Orientia tsutsugamushi)と言う菌が、メス親から子供のメスへと伝えられ、吸血された人間に感染します。保菌しているツツガムシの生息地域は狭く、限定されていますが、正確な発生場所の特定は困難なようです。症状は、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱など。体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達します。刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多く、刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫れて来ます。3~4日目より不定型の発疹が出現しますが、発疹は顔面、体幹に多く四肢には少ないそうです。テトラサイクリン系の有効な抗菌薬による治療が適切に行われると劇的に症状の改善がみられます。処置が遅れるなどして重症になると肺炎や脳炎を起こし、最悪の場合死亡します。北海道を除く全国で発生が見られます。
中学生の時に「つつがない」の語源としてツツガムシの事を教わりましたが、これは間違いのようです。
ツツガムシと同じリケッチアのうちの一種の細菌により引き起こされます。ただし、一生涯吸血をするマダニ類が媒介となります。症状は上記のツツガムシと似ていて、識別が難しいそうです。ツツガムシと同じくテトラサイクリン系の抗菌薬が有効で、致死率はツツガムシよりも低いようです。
自分も調べていて勉強になりました。ダニ由来の感染症は発見されてからの歴史が浅く、データが少ないのでこれらの情報を鵜呑みにするのは少々危険だと思われます。確実な予防法は野外活動の自粛ですが、そういう訳にも行きません。明るい色合いの服を着てダニを見つけやすくしたり、肌の露出を控えるとか、ディード含有の虫除けを使用するとか、ある程度の予防をする事が出来ますが、0.2mmのツツガムシなんて気が付くわけありませんので、草むらなどには極力入らない方が良さそうです。ただ、激坂の斜度のように30%の保菌率とかは無いようなので、それほど神経質になる必要はないのかも知れません。ただし、注意は必要だと思います。
山では小さな天候の変化にも気を配りましょう。
その1 「気温」
山は標高が高いので、平地より気温が下がります。登山で言われている事になりますが、標高が1000m上がると、気温は6℃下がります。100mにつき、0.6度下がって行きます。これはかなり正確で、真冬の夜間は東京でも0℃近くになりますが、東京都の最高標高地点2000mの「雲取山」では-12℃になります、これは実際に私がテント泊を行なって確認しております。真夏の「八ヶ岳の赤岳」標高2899mに登ると、平地では30℃あっても、12℃と言う東京での真冬の日中の最高気温と同じ位までしか気温が上がりません。登るべき標高を調べて気温を計算して、ウェアーを選んで快適にライドが出来るようにしましょう。特に山でボッチライドをする私のような人は要注意です。雨に打たれて風が吹いたりしたら命に関るかも知れません。
その2 「雷」
私はまだロードバイクに乗り始めて夏のシーズンを経験しておりませんが、登山の経験から特に夏の天候の変化に気をつけたいと思います。夏山では早い時間に行動を終らせる事が鉄則です。山では平地で暖められた上昇気流によって積乱雲が発達しやすいです。だいたい午後2~3時ごろから天気が崩れる事が多いです。山では雷が横にも走ります。なぜなら雷が発生する場所にいるからです。これはマジで怖いです。夏は早めに行動しましょう。そして、雷の音が聞こえたら登坂を中止する勇気も必要だと思います。雷の群れに囲まれた恐怖は忘れられません。
「落石」
2017年9月9日に、台湾で35歳の邦人の自転車乗りの方が落石に合い、その後亡くなられてしまいました。ご冥福をお祈りすると共に、落石という危険についても考えたいと思います。
ヒルクライムをしていると、路面に転がっている落石は日常茶飯事と言った感じで、それほど気にも止めないかもかも知れませんが、リアルタイムで落ちてきた場合はかなりの恐怖を味わうものだと想像されます。「落石がある」=「また落ちてくるかもしれない危険なエリア」ですので、谷側を注意しながら走るしかなさそうです。ただ、平坦な道なら避けたりブレーキをかけたりして、回避する余裕もあるのでしょうが、激坂の場合はそうは行きません。上に逃げ切る速度を出す事も難しいですし、Uターンをして落石から逃げる事も難しいと思われます。その場合は落車して坂道を転がり落ちてしまったほうが生命を守る事に繋がるのかも知れません。タイミングと運に左右される危険ではありますが、心構えはあった方が良いと思われます。
以上、現状で思いつく事を書いてみましたが、新たに思いつく事があったら追記する予定です。また、読んで頂いている方で「こんな危険もあるよ」と言う情報をお持ちの方はご連絡頂けるとありがたいです。